にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2022年5月号(221号)

2022年5月号(221号)

新緑が眩しい季節になりました。昼間は、日差しが強いものの、清々しい風が
通り過ぎていきます。
こいのぼりも、とても気持ちよさそうに青空を泳いでいますね。

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~…. 岩瀬ひろみ
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

  1.  子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
    5月14日、28日(土) 15:00~17:00
  2. 読書会
    先月号のニューズレターでご案内した読書会を下記の日程で行います。
    1回目は、第1章「問題提起 英語を母語にもたない子どもたち」を読み、
    重要なポイントについて話し合う中で、問題点を共有したいと思います。
    参加を希望される方は、加藤にご連絡ください。
    • 日時:5月13日、27日(金) 13:30~15:00
    • 課題図書:バトラー後藤裕子著『多言語社会の言語文化教育』(くろしお出版)
    • 方法:リモート会議システム(zoom)
    • 参加費:にほんごNPO会員は無料です
  3. 浜松国際交流協会(HICE)から「令和4年度 浜松市日本語教室開催業務(白脇教室)」を受託しました。
    ひらがな・カタカナ・漢字を8月27日(土)から11月5日(土)まで、全12回で学習します。

小春日和~現場から~…. 岩瀬ひろみ

◆リニューアル号より、特集として日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、
海外駐在を経験された方の声などをひろっています。
今回は、「日曜教室」を担当されている岩瀬ひろみさんのコラム後編です。
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「日曜教室のご紹介」<後編>

今、一番多い学習者の出身地はフィリピンかベトナムかそれとも
インドネシア?アメリカイギリスをはじめ、ブラジル、ペルー等アジア以外の
国からの方も少なくないです。

私が担当しているN2クラスでは7月の能力試験で合格者が出ました。
母国では日本の銀行の現地支店で営業をしていたという実力者。
合格が自信につながり就職活動を始め、見事1月からお仕事に!
相談を受け、クラス外で自己PRの内容を一緒に考えたり、面接の
アドバイスもしました。
私たちの活動がお役に立っていると実感できた気がしてうれしかったです。

現在の学習者は小中学校時代を日本で過ごし、一旦帰国の後、
日本で働いて家族を持ってがんばっています。忘れてしまった漢字を
もう一度思い出すため一生懸命です。
目標達成に必要と自分で気づき、やる気スイッチが入ったことがうれしくて、
私ももう一人の担当の先生も読解の役に立つようにと文化的な背景や
知識を解説したり、社会人としての一般常識も身につくようにとテキスト
以外の読み物や課題をせっせと用意しています。

「日本語を使う機会がない」という声も確かに聞きます。
せめて教室に来てくれた方たちには教室でいろいろな国の方と
一緒に活動することで職場や地域で日本語でコミュニケーション
するためのお手伝いができればいいなと思います。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【飛ぶ教室】

毎週金曜の夜9:05から、NHKラジオの第一放送で「飛ぶ教室」
という番組が放送されている。私はこれを「聞き逃し配信」で欠かさず聴く。

この番組は、番組のHPで次のように紹介されている。ご興味のある方は、是非!

作家・高橋源一郎さんをセンセイにあなたの好奇心を呼び覚ます夜の学校。
一コマ目は源一郎さんが現代の世相や時局を分析、お薦めの一冊を紹介。
二コマ目は、その道のスペシャリストに源一郎さんが知りたいことを聞き出します。

聴き始めた当初から(といっても、スマホを買い替えてしばらく経ってから
だから、昨年の10月頃からかなあ)、「飛ぶ教室」というタイトルが気になっていた。

『飛ぶ教室』は、ドイツのエーリヒ・ケストナーが1933年に書いた
子どものための小説だ。
高橋センセイは、この小説のタイトルが「大のお気に入り」なのだそうだ。
2020年3月20日に放送された初回の番組(YouTubeで聴くことができます!)
で、新番組のタイトルを決めたいきさつを紹介されている。

さて、4月のある日のこと、新規指導者のSさんと小学校高学年の日本語指導に
ついて話をしていた時、5年生の国語の教科書(光村図書)の巻末ページに、
この小説が紹介されているのを発見。90年近くも読み継がれてきた作品だ。
「これは読むべし!」。さっそく、岩波少年文庫版(池田香代子訳)を手に入れた。

かしこさをともなわない勇気は乱暴でしかないし、勇気をともなわないかしこさは屁のようなものなんだよ!(同書p.25)

この言葉に出会ったとき、子ども時代に、どんな本に出会い、どんな風に
その本を読んだかが、その人の生涯を決定づけるのではないかと思った。
もはや取り戻すことのできない自らの子ども時代を、沈んだ気分で振り返った。
そして、全ての子どもの近くには、優れた読書の導き手がいて欲しいと思った。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは4年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
4月からは大学院で学ばれています。
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【話し方】

コウさん(仮名)は自分の名字を頭に付けて話す。
コウは〇〇が好きです、その仕事コウがやります、といった具合だ。
ある教授にそれを注意された。
「わがままに聞こえるし、変だと言われました。」
中国人留学生で、大学院の長期履修生として日本で働きながら院に通う
コウさんの日本語は流暢だ。直したほうがいいでしょうかというコウさんにこう返した。

日本語母語話者が自分の名を頭につけて話すケースは少ないかもしれない。
幼い子どもが〇〇ちゃんは・・・・・・、と自分について話すイメージがあるから、
子どもっぽいと感じる人がいるのも事実だ。
しかしそれを知った上で使うのならいいのではないか。
正しい日本語などというのは幻想でしかなく、何が正のかは人によって違う。

 「そういえば、一緒にアルバイトをしている女の子が、メイはね、といつも自分の名前をつけて話してました。」
「それは可愛く見せるための演出だよ。」

 「コウさんのは中国の影響でしょ。」
一緒に話していた教授が言った。
同僚の中国人教授もコウさんと同じように話すという。
中国語には「我」があるから、名前を使うことは少ないとコウさんが説明する。
知っているケースが少ないとこんな誤解も生まれる。

《編者メモ》

ゴールデンウィークに突入しましたが、前半は、あっという間に過ぎ去ってしまいました。
気負わず、自分のペースで過ごすことができたら、とてもよい連休になりますね。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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