にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2022年11月号(227号)

2022年11月号(227号)

だんだん寒くなってきました。
昼間は暖かくても、朝晩は冷えますね。
冬用コートは、まだ早いけれど、何か着ないと寒い…
厚着は昼間暑くなってしまうし…と迷うこの季節。
皆さんはいかがでしょうか。

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….杉山美樹子 
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

  1. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
    11月13日、27日(土)15:00~17:00
  2. 日本語文法勉強会
    11月6日(日)14:00~15:30(最終回です)

小春日和~現場から~….杉山美樹子

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今回の担当は、小中学校での日本語・学習支援指導者、杉山美樹子さんです。
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【ランニング・レコード】

みなさんは、「ランニング・レコード」という名称を聞いたことがあるでしょうか。
「走りの記録」ということではなく、アメリカの小学校で生徒の読解レベルを
測るものとして導入されているものです。
(バトラー後藤裕子『多言語社会の言語文化教育』くろしお出版)

ランニング・レコードは、テキストが児童の解読スキルのレベルごとに分類されていて、
解読スキルを数値で算出できるようになっています。
児童のレベルにあったテキストを見極めるための一応の目安を示してくれるものです。

日本語指導においても、ランニング・レコードを活用すれば支援児童の読解レベルを
把握でき、間違いを分析することで、支援をしなければいけないところが分かるのでは
ないかと思いました。また、ランニング・レコードは、客観的な数値がでてくるので、
支援結果の資料としても有効なはずです。

日本語でのランニング・レコードはないものかと探したところ、それについて論文を
書かれている新潟大学の足立幸子教授に行き当たりました。
いろいろと伺ってみたところ、現在日本語でのランニングレコードに該当するものは
ないということが分かりました。

足立先生から助言もいただき、加藤代表とテキスト探し、分析表作成、
分析表の書き方等の検討を始めました。分析表は、Web茶まめ(国立国語研究所)に
テキストを分析してもらうとあらまあ、形態素解析をしてくれるのでそれを利用。
(実は、その他、とても細かな作業があるのですが、加藤代表にお願いしてしまいました。)

練習用2つと本番用のテキストを作成。(製本は事務局の由里子さんにお願いしました。)
そして、興味のある方を募り、試行するまでこぎつけることができました。

私は、日本人生徒との比較も興味があったので、担任の先生に支援児童と同じクラスの
児童3人を選んでいただき、週1回3週にわたって試行しました。

児童の解読スキルの向上の速さときたら目を見張るものがありました。
支援児童も、みんなと同じものを読めるようになりたいという向上心をみせてくれました。
支援児童のひとりは、やや長めの本番テキストに対して、解読スキルは低いのですが
読解力はあることがわかりました。

アメリカで行われているランニング・レコードも実践を重ね、レベルを検討し直したり
しているようです。私はまだまだ試行錯誤の段階ですが、まずは、低学年用の形を作って
いきたいと考えています。もし、興味のある方がいらっしゃいましたら、
低学年児童のための物語絵本やノンフィクションの本の推薦、記録の取り方の工夫等の
ご意見をお願いいたします。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【デスク爆弾】

穏やかな日曜日の朝、のんびり新聞を読んでいると、「デスク爆弾」という物騒な
タイトルが目に飛び込んできた。(日本経済新聞2022年10月30日, p.8)

「デスク爆弾」とは「デスク・ボミング(机への爆弾攻撃)」の訳で、
「相手の机に前触れなく近づき話しかける行為」を言うのだそうだ。

記者(イギリスのFINANCIAL TIMES紙)は、
「(自分は)常習的な「爆弾攻撃屋」で
「直接話をする方が効率的だし、たいてい楽しい」と書いているが、
イギリスのオフィスでは、職場の同僚への爆弾攻撃を避けようとする
「極端に内気」な人々や、「邪魔されることに不寛容な人々が急増している」という。

記者の20代の同僚は、隣に座っていた40代の人から仕事のメールを
よくもらったというから、若い世代だけの傾向ではないようだ。

日本のオフィスでも同様のことが起きているのは、以前、新聞で読んで知ってはいたが、
今回のように「デスク爆弾」という名前がつくと、一気に認知度が上がり、
「デスク爆弾反対」だの「デスク爆弾歓迎」だのという議論が活発に行われるようになる
のではないだろうか。
それにともない「デスク爆弾を効果的に炸裂させるための言語力の磨き方」の研究も
必要になるにちがいない。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは4年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
4月からは大学院で学ばれています。
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【大人の対応】

駐輪場に止めた自転車がない。

駅まで自転車で行き、電車に乗って掛川に行った。夕方帰ってきたらなかった。
鍵は2年前に壊れて以来かけていない。

「自転車を盗られた、バスで帰る。少し遅くなる。」
メールをすると、折り返し妻から電話が入る。
「駅の交番で盗難届け出しなよ。」
腹が減っているのに、帰宅がさらに遅くなる。でも逆らうと後が面倒だ。
交番に行き、盗まれた旨を伝える。

「登録番号は分かりますか。」
「知りません。」
「買った店に記録があるはずだから、聞いて、それから届けを出して。」

電話番号と住所を聞かれその場は終わる。自転車は明日にも必要だ。
翌日、朝1番でD2に行き新しいものを買った。
悔しさはあるが、5年も乗った自転車に未練はない。

先週の土曜日のことだ。
雄踏交番から電話が入る。

新居駅の近くにあなたの自転車があった。
交番にあるから受け取りに来て欲しい。いつ来ることができますか。
できるだけ早いほうがいいんですが。

盗まれてもう1ヶ月だ、今更出てきてもらっても困る、
そちらで処分していただけませんか、と言いたいところだが、
そんなことは言えない。

わかりました。でも早いほうがいいと言われても、私は遠州浜在住です。
雄踏まで取りに行っても帰りが困る。軽トラかバンの手配をしなければならないので。
大人の対応で返す。
自転車はどうでもいいから盗んだ人を見つけてと言いたかった。

《編者メモ》

ニューズレターを編集しているのが、ちょうどハロウィン。
浜松駅前にも、思い思いの装い?で楽しんでいる人が大勢いました。
もともとのハロウィンは、なんだっけ?と思うこともありますが、
ルーツは違えど、いろいろな人たちが楽しめるのは、いいことかな
と思いながら改札口に向かいました。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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