にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2023年3月号(230号)

2023年3月号(230号)

満開のニュースや、河津桜開花のお知らせなど、
まだ寒い日もありますが、春目前ですね!
暖かくなるのは嬉しいけれど、花粉症の方にとっては悩ましいシーズンです。
コロナ対策でのマスク着用義務はなくなっても、花粉予防のため、引き続き
マスクを使う方も多いことでしょう。

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….中野具子
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

  1. プレスクール事業(全8回)が終了しました。
    3月4日(土)11:00からプレスクールの閉校式が行われ、
    22名の子どもたちに「がんばったで賞」とメダルをプレゼントすることができました。
    元気な声で「あいうえおの歌」を歌う姿や前に出て名前を言う姿を見ていると、
    ほんの数週間でよくここまで成長したなあという思いがこみ上げてきました。
    プレスクール事業にご協力くださったスタッフの皆さんにこの場をお借りして
    お礼を申し上げます。
  2. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
    3月11日(土)15:00~17:00
    ※3月の学習会は、1回です。
    参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。

小春日和~現場から~….

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今回は、子どもたちへの日本語・学習支援を担当してくださっている中野具子さんです。
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【支援で心掛けていること】

2020年12月、マスク生活も1年を迎えようという頃、私の支援活動は始まった。
この間、出会った児童生徒はざっと20人。子供達の「顔半分」とかわいい声がよみがえる。
支援を始める前、私は日本人の子どもに勉強を教えてきた。
子どもたちの成績を上げるのに必死の十数年だった。

そんな私に転機が訪れたのは娘が高1の時。
順調に歩んでいるかに見えた娘が、ある日学校を飛び出したのだ。
目標を見失い、成績はあっという間にどん底に落ちた。
どんなに勉強ができたって、心がパンクしたらそれまでだ。

私には娘に十分な愛を注いできた自負があったが、その時相談に乗ってくれた女性牧師が
私にこんな聖書のことばを教えてくれた。
「愛は寛容であり、愛は情け深い。またねたむことをしない。愛は高ぶらない、誇らない。
自分の利益を求めない、いらだたない…」 

目から鱗だった。
私が注いできたのは愛ではなく、成績や世間体などこの世の価値観を土台にした自分の思いだった。
「木は実で判断しろ」という言葉の通り、子どもの成果は大人がどんな水(言葉)を
かけてきたかによるのだと思う。
生き方の軌道修正は容易じゃなかったが、娘はその後新たな希望に向かって
必要な勉強を求めるようになった。
私は数値化された成績より目に見えない心の喜びがいかに大切かを学び、
学力偏重の社会に加担してきた学習サークルを手放して、今に至る。

両親共働きで親子のコミュニケーションが希薄になっているといわれる昨今、
私が支援で心がけているのは子どもを笑顔にすることだ。
日本語教育に正解はないが、マスクの下から聞こえる「もっとやりたい!」の声が
私への評価だと思ってやってきた。
日本語が上達せず成果が表れない時は、自分が注いできた水(指導のあり方)を吟味し、
あの手この手で自由にやらせていただいた。

支援を始めてまだ2年、ほんの入り口に立ったところだが、
子どもの学習意欲は喜びの先にあるんだと思う。
私にできることは多くないが、心に寄り添える「先生」でありたい。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【ChatGPTショック】

ChatGPTというアプリケーションの存在を知り、ショックを感じたのは2月10日のことだった。
大学で英語を教えている知り合いが、
「このアプリをレポートの添削に利用し、作業効率を上げている。
 今後は、文章問題の作成にも利用していくつもりだ」
と言ったからだ。

その5日ほど前に、日本経済新聞に「社会は生成AIの進化にどう向き合うか」という
社説が掲載され、ChatGPTについても言及されていたのだが、
情けないことに、新聞の紙面からはChatGPTという「生成AI」の能力の凄さを
実感として感じ取ることができなかった。

しかし、現実に仕事に活用している人から話を聞き、
YouTubeなどでその詳細を知ると、想像を超えたAIの進化に大きな衝撃を受けた。

ChatGPTは、OpenAIというサンフランシスコに拠点を置く企業が
昨年の11月30日に公開したアプリで、対話形式で質問すると、
自然な文章で即時に文章が返ってくるというものだ。
新聞によると、利用者の数は、すでに世界で1億人を超えたという。
最近も、マイクロソフト社がBingという検索エンジンにChatGPTを搭載すると
発表して話題になった。

AIに指示をすれば、瞬時に詩や小説、企画書や論文を書いてくれる時代だ。
人間の役割や仕事の方法に大きな変化が生じるにちがいない。

自動翻訳の性能も分速で進化している。
極論かもしれないが、母語以外の言語の教育に膨大な時間と費用をかけるより、
デジタルスキルを活用できる人間を育てたほうが社会にとって有用なのではないかと
考えてしまう。

そうなると、未来を担う子どもたちの母語力(=思考のための言葉の力)を
どうやって伸ばすかが重要性を増してくる。
今後は、ますます日本語学習支援の質と方法が問われるだろう。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは4年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
4月からは大学院で学ばれています。
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【仕返し】

息子がリンゴを指さしアップルと言った。
「英語で書ける」
「当たり前だよ」
小学4年生を嘗めるなよと言いつつ、書き始める。
「appu」
「それ違うよ。」
「あ、待って、分かったapprだ」
小学4年生なんて嘗めてもいい。

息子は英語だけでなく日本語も怪しい。
先日「習た」とノートに書いてあった。指摘すると「習う」は習ったが「習った」は習っていないという。
「『習う』を習ったなら、『習った』もわかるでしょ。」
「なんでさ。」
「『習』は、『なら』って読むのは、分かるよね。だったら、習ったを習わなくても習ったって   
 わかるはず。」
「習う」がネタだとややこしい。

2月の上旬、息子がコロナに感染した。発熱3日目に熱が下がる。
暇そうにしていたのでマンガの本を4冊買って渡す。

全快した後の夕食時だ。
「マンガの本4冊買ってあげたよね。」
息子に念を押す。
「うん。」
「大人になっても、ちゃんと覚えておけよ。」
「えっ、オレに仕返しをしろってこと。」
覚えておけ、に反応したのか、単純に間違えたのか。私は仕返しされるらしい。

《編者メモ》

寒い冬では、我が家のワンコは散歩を嫌がります。外に出ても、家へ回れ右してしまいます。
(犬は喜び庭かけまわる、ではないのです…。散歩と言えど、寒いのは嫌みたいです。)
最近は、暖かくなり、最初は嫌々していても、外気温に慣れると楽しそうに歩いています。
散歩コースである、ご近所にある大学の桜も、蕾がだいぶ膨らんできました。
卒業、入学、新しいことを始める…、いろいろな節目となる季節ですね。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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