にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2025年3月号(252号)

2025年3月号(252号)

3月イメージ図

3月は弥生。旧暦3月を弥生と呼んでいて、そのまま新暦でも弥生となっているそう。
草木がいよいよ生い茂る月という「木草弥や生ひ月(きくさいやおひづき)」が詰まって
「やよひ」となったという説が有力だそうです。
花月、桜月、花見月などの別名もあり、いよいよ春ですね!

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~…野秋貴靖
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

  1. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
    3月 8日(土)15:00~17:00
    ※4月はお休みで、5月から再開します。
    参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。
  2. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん浜北」(ふれあい交流センター浜北)
    土曜日14:00~16:00 ご希望に応じて随時開催します。
    参加ご希望の方は、090-7959-4153(たうち)にお電話またはメッセージをください。

小春日和~現場から~….. 野秋貴靖

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今月も先月号に引き続き、にほんごNPO監事の野秋貴靖さんです。
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【手話学習中②】

昨年初夏に始まった市役所主催の手話講座は、春を迎え11か月間46回の課程が終わります。
毎週1回の講座に通ったクラスの約20人は、大半が仕事を持ちながら時間を工面して出席しており、
お疲れさまでしたとねぎらいたい気持ちになります。

先日、大井川鉄道沿線の家山で、聴覚障害者のイベントとして
デフリンピックの自転車競技の選手の講演会があり参加しました。
駅から歩いて会場に近づいていくと車の案内係が手話でやりとりをしている姿が見えます。
これから入る世界は、主な言語が手話となり、手話ビギナーの自分は
言語マイノリティになることを実感します。
      
講演では、音のない世界での選手の苦労や経験談などが手話で語られ、
11月のデフリンピックの予告がありました。
イベント参加者の大半は聴覚障害者で、ステージの発言や手話の内容は
舞台袖のスクリーンにも文字で映されます。
字幕の入力は、誤変換を避けるために自動音声変換ではなく、
4人の担当者が数分間ずつ交替で手入力をしていきます。

漢字の同音異義語の最多は「こうしょう」で、
「交渉」「考証」など48個あるそうですが、
AIでもそれらを瞬時に判別することはできないようです。
これは、和英の音声翻訳ソフトにもあり、「佐藤利夫」と話しかけると、
ほぼ「sugar & salt」と訳されます。
誤訳も楽しいのですが、「さとう」と「しお」です。

口の動きから発語を読み取る口話法という方式があります。
聴覚障害者の方々は学校で長くこれを習得することが求められてきました。
ただ、口話が可能な人も、同音異義語や「1時」と「7時」などを
口の形を見て区別するのは難しく、手話の必要性は変わりません。

イベントの帰途、電車内で名古屋から参加した男性と手話で会話をしました。
冷や汗をかきながらの手話ですが、少しでもこちらの意図が通じると嬉しく感じます。
まだ初心者ですが、手話を習うことで意思疎通の手段が一つ増え、世界が少し広くなりました。
さらに続けていきたいと思っています。 

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【「気づき」こそ第一歩】

そのとき、どうしてそんな話になったのか思い出せないのだが、
日本人二人に「『問う』の過去の言い方は?」と尋ねてみたことがある。
二人が二人とも即答を避け、戸惑っている。

「『会う』『言う』『買う』は、それぞれ『会った』『言った』『買った』だけど、
『問う』は、『問うた』なんだよねえ。」
と言うと、二人から「普段、あんまり使わないから……。」という反応が返ってきた。

日本在住30年、10年ほど前に日本語能力試験1級合格という外国人の方にも同様の質問をしてみた。
即座に「問った」という答えが返ってきたけれど、無理もない。
規則に当てはめれば、「問った」になって当然なのだから。

皆さんは、話し言葉で
「~に ~と 問うたときね、・・・。」
とか
「~は ~に ~を問うているんだよ。」
などという表現を使ったことがあるだろうか。
おそらく、多くの方は普段の生活では使わないのではないだろうか。
だから、突然「『問う』の過去の言い方は?」と聞かれても
答えられないのは当然だ。

『明鏡国語辞典』には、次のように説明されている。
 「質問する」より文章語的な言い方。
 「た」「て」に続くときは「問った・問って」のように
  促音化せず、「問うた」「問うて」のように長音化する。

二人の日本人には
「新聞や小説など、活字ではよく使われるんじゃないかな。気づかないだけだよ。」と
言ってはみたものの、自信があるわけではなかった。
二人の反応も、「半信半疑」といった様子だった。

ところが、何と、その日の夕食後に開いた『スピノザの診察室』(夏川草介著、水鈴社)で
早速「問うた」「問うて」の使用例に立て続けに出会ってびっくりした。

 (1)五橋の口調は何気ないが、その眼には真摯な光がある。
  興味本位で問うているのではなく、
  南の心根を確かめようとするような雰囲気がある。(p.135)
 (2)その問いかけは、南に問うたものというよりは、自分自身への確認のようであった。(p.152)
 
日本語母語話者であれば、「問う」に「た」や「て」が続いたときの形を
即座に答えられないにしても、「脳内辞書」にはしっかり刻まれているはずだ(と思いたい)。

教室指導を受けておらず、且つ大量に活字を読む習慣のない非母語話者の場合は、
「問うた」や「問うて」に出会う確率が低く、この形を習得できるチャンスも少ない。
たとえ出会ったとしても、そこで「はっ!」と気がつき、
辞書で調べてみるなどのアクションがなければ習得には結びつかないだろう。

言語のどんな習得段階にあったとしても、語彙習得の第一歩は、どんな形であれ
「気づき」が大切だと思う。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは、静岡文化芸術大学で日本語学や英語教育を学び、
昨年3月に修士課程を修了されました。
研究を続けながら、日本語学校の非常勤講師をしていらっしゃいます。
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【健康観察アンケート】

小6の男子はちょろい。
先月末に息子が発熱した。金曜日の夕方だ。月曜の朝は熱が下がっていた。
念のため近所のクリニックへ連れて行く。
「インフルエンザですね。木曜日まで学校を休んでください。」
本人は至って元気で、一日中ゲームをしたり、マンガを読んだりしている。
火曜日の夕方に学校から連絡が来た。
「水曜日から金曜日まで学級閉鎖となります。」

家庭学習をするためのタブレットを小学校まで受け取りに行く。
タブレット上にいくつか課題が出ているらしい。
週末に一気にやると言う息子に
「先生がちゃんとモニターして、いつ、どれくらいやったかすぐわかるんだよ。」
学校ではいい子を装っている息子は、翌日課題をやっていた。

「明日は5時に起きる。」
金曜日の夜、学校が休みのため8時過ぎまで起きてこない息子が宣言をした。
「どうして。」
学級閉鎖中はタブレットで毎朝健康観察のアンケートをすることになっている。
解答時間を先生が見て、早起きランキングをタブレット上で公開しているらしい。
「3位まで、名前が出ている、オレは明日1位を取る。
 でも5時だといかにも狙ってましたと思われるから、やっぱり5時15分にする。」

目覚ましをかけたようだが、翌朝7時になっても起きてこない。
「もう7時だよ。」
えっ、と言いつつ起き上がった息子は、時計を確認し布団に戻った。
「1位になれないから、もう一度寝る。」
「3位くらいなら入れるかもよ。」
息子はタブレットを取りに走った。
後に健康アンケートは平日のみとわかった。

《編者メモ》

苦手な冬から暖かい春になり、とても嬉しいことなのですが、
素直に喜べないのが、花粉です。
最近は症状が軽くなったのですが、これは加齢により身体の感覚が
鈍くなっているという説を読み、これまた素直に喜べません…。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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