にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2024年11月号(249号)

2024年11月号(249号)

11月イメージ

11月は「霜月(しもつき)。」「雪待月(ゆきまちづき)」という異名もあるようですが
最近の気候では、雪どころか霜が降りるのも、随分先になりそうですね。
英語のNovemberは、9番目の月、という意味で、紀元前46年まで使われていた
ローマ暦が3月スタートで、3月から9番目ということだそうです。
地域や文化が変わると、暦の由来も違うものですね!

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….中野具子
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

  1. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
    11月  2日(土)15:00~17:00
    ※11月2日のみ、東部協働センターで開催します。
     https://maps.app.goo.gl/BK3phskKCGpFrtLQ9
    11月16日(土)15:00~17:00
    参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。
  2. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん浜北」(ふれあい交流センター浜北)
    11月   日(土)14:00~16:00
    11月   日(土)14:00~16:00
    参加ご希望の方は、下記のURLからどうぞ。
    または、090-7959-4153(たうち)にお電話ください。
     【ポルトガル語版】
     URL:https://forms.office.com/r/5hu0aWHuWP
     【英語版】
     URL:https://forms.office.com/r/i5mAmy6qhS

小春日和~現場から~….. 中野具子

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今月は、8月から11月まで開催している「ひらがな・カタカナ・漢字教室」で
教えてくださっている中野具子さんです。
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【シチューとスープの違いは何ですか?】

先日のカタカナの授業で、「チュ」のつく語彙の一例として「シチュー」を挙げたところ、
学習者からまさかのこんな質問が出た。
具が多いのがシチュー⁇ いや、ルーが入っていないのがスープか⁇ 
指導補助の先生方と相談するも、答えが出ぬままこの日の授業は終わった。
帰宅してさっそく調べてみたところ、シチューはスープの「一種」で、
肉や魚介類、野菜などを大きく切って、具を楽しむ料理を指すのだとか…。
へぇ~っと思わず声が出るとともに、学習者はこういうところにひっかかるのかと、
思いがけない視点にハッとした。

それからもう1つ、学習者からの質問で今回家に持ち帰ったものがあった。
それは「お願いします」の意味についてだ。
職場で聞く「コピーをお願いします」と、レストランで聞く「お水をお願いします」
確かに、言われてみれば、何か違う。

どちらもお願いには違いないが、
前者は「コピーをとってください」という相手に対するお願いで、
後者は「(私に)お水をください」という自分に対するお願いだ。
これは困った…。
職場で上司に「これお願い!」なんて言われた日には、
「お願い!」の中味は状況によって毎回変わる。
混乱するのも無理はない。
日本人にとっては毎日使う便利な「お願いします」だが、
外国人にとっては、こちらの想像以上にややこしい言葉なのだと目から鱗だった。

こうした咄嗟に出る質問は、ドキっとさせられる反面、指導者にとっては気づきと学びの宝庫だ。
その場で答えられなくたって、こちらは未熟者と思えば何てことはない。
家に持ち帰って勉強し、どうしたらここのニュアンスが伝わるかなぁ…と思いをめぐらせ、
スライドにする時間が嫌いじゃない。
教室にプロジェクターが備えられ、通訳してくださる先生がいらっしゃることにも感謝だ。
授業も残すところあと2回、果たしてどんな質問が出てくるか…。
「うんうん」「あぁ」という学習者さんの反応に活力を得て、今日も授業の準備に当たる。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【プルーストとイカ】

NHKプラスで配信されていた「宙(そら)わたる教室」というドラマを見た。
新宿の夜間高校が舞台だ。退学届けを提出しに来た生徒に教師が言う。
「君はディスレクシアという障害かもしれない。」

ディスレクシアというのは、特に読み書きに困難を抱える学習障害の一つだ。
俳優のトム・クルーズや映画監督のスティーブン・スピルバーグが
ディスレクシアであることを公表しているから、ディスレクシアについて
ご存じの方も多いかもしれない。
でも、もし、親や教師にディスレクシアについての知識がない場合は、
怠けているのではないかと誤解されることがある。

ドラマの中で、教師に障害の可能性を告げられた生徒は、
これまでに味わってきたつらい気持ちを担任教師にぶつける。
「俺は怠けていたわけじゃねえ。」
「結局、不良品は不良品ってことだよ。なくしたもの(これまでの時間)は取り戻せねえ。
こんな思いするくらいだったら、何も知らないままでよかったんだ。」

小学校で日本語を指導しているNPOのメンバーから
「支援している子どもが、なかなか平仮名が読めるようにならないんです」
と相談を受けたことがある。
私自身も、どんなに教え方や教材を工夫しても音と文字が結びつかない子を前にして、
「もしかしたら、ディスレクシアかもしれない」と戸惑うことがある。

ドラマを見て、夜間高校に通う青年の悲痛な叫びに胸が痛くなった。
もう一度ディスレクシアについて調べてみようと思い、
本棚から『プルーストとイカ』というタイトルの本を取り出した。
国際ディスレクシア協会発行のハンドブックにも参考文献として取り上げられている。

この本には、「読書は脳をどのように変えるのか?」という副題がついており、
読字の発達プロセスやディスレクシアの診断について、かなり詳しい記述がある。
「プルースト(フランスの作家)」は読書の個人的で知的な次元を、
「イカ」は脳の神経細胞がどのように発火して情報を伝達し合うのかという
生物学的な次元を表している。

2008年の発行当時、ラインを引きながら精読したつもりだったが、
今回読み返してみると、また新たな学びがあった。
もう少し、ディスレクシアの子ども達への指導法のあり方など、
知りたいことがたくさんある。
ディスレクシアについて知るには、まだまだ時間がかかりそうだ。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは、静岡文化芸術大学で日本語学や英語教育を学び、
この3月に修士課程を修了されました。
研究を続けながら、日本語学校の非常勤講師をしていらっしゃいます。
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【昭和】

小6の息子が明日から修学旅行に行く。
行先は東京方面、浅草では自由行動をし、買い物などをするらしい。
「木刀売っているかな。」
修学旅行のお土産=木刀、令和生まれなのに発想が昭和だ。

木刀の話を日本語学校の職員室でしたところ、中学生の息子さんを持つ先生が教えてくれた。
息子さんの修学旅行のガイダンスでは、お土産に木刀を買わないようにという注意があったという。
昭和でも令和でも小中学生男子は木刀を買う。
 
掛川市役所の日本語教室では、
静岡文化芸術大学の日本語教員養成課程で学ぶ教育実習生を2人受け入れている。
その内の一人になぜ養成課程を受講しようと思ったのかを尋ねた。
高校一年生のときに行ったアメリカへの交換留学がきっかけだったようだ。
その実習生がアメリカに行った理由は二つ。
昔から洋画が好きでアメリカに憧れていた。
英語といえばアメリカだと思った。
外国=アメリカ、これぞ昭和の発想だ。

《編者メモ》

日本語教師養成講座・教育実習のモデルスチューデントとして登録してくれた
日本語学校の学生さんの1人が体調不良などが重なり、結局1度も参加できなかった。
お仲間の1人に、1月からは参加できそうか聞いたところ
「毎回ごめんなさい。僕からもちゃんと来るように言います。」
怒っているのではないですよ!心配しています、とお話しましたが
真面目なお人柄であるが故に、責任を感じさせてしまったようで反省です。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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