にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2023年2月号(229号)

2023年2月号(229号)

2023年になった…と日々過ごしていたら、あっという間に2月です。
先日は、大寒波到来で、浜松でも雪が降りましたね。
でも、道端には、よもぎの新芽を発見!春は確実に近づいています。
寒い日が続いていますが、暖かくして過ごしたいですね。

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….岡田理江
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

  1. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
    2月11日(土)15:00~17:00
    2月25日(土)15:00~17:00
  2. 新一年生になる外国人の子どもと保護者のための「プレスクール」(浜松市教育委員会委託事業)
    場所:可美公園総合センター
    1月14日(土)~ 3月4日(土)各回 9:30~11:30・・・全8回

小春日和~現場から~….岡田理江

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今回は、子ども支援部会(日本語・学習支援事業担当)の岡田理江さんです。
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【目的と手段】

みなさんは、小中学生の頃、漢字書き取りの宿題が好きでしたか? 
私は、面倒だし手が真っ黒になるし、あまり好きではなかった印象があります。
それでも、一通りの漢字を覚えているのは、書き取りのおかげかもしれません。

書き取りは、漢字を覚えるためにするはずですが、子どもたちの中には、
宿題を出すために書き取りをしている子も多いようです。
先に「偏」だけ全部書いて、後で「つくり」を書くという子もいるそうですから。

目的は「漢字を覚える」ことなので、目的を果たすことができるのなら、
本当はどんな手段でも良いはずです。
とはいえ、子ども達が自分で手段を考えるのは難しいので、
まずは指導者が選択肢を与えて、いろいろと試した上で自分に合った手段を
見つけられると良いと思います。

外国につながる子ども達にとって、漢字学習はとても大変です。
「漢字をたくさん覚えよう」ではなく、「図形の漢字を10個覚えよう」など、
具体的な小さい目標を決め、達成感を味わいながら大きい目標に近づいていけると
いいなと思います。指導者としても、小さい目標を考えることは、
教える目的を明確にしやすいと思います。

先日、県のボランティアセミナーで
「外国につながる高校生を対象とした日本語及び進路支援」について発表しました。
私は、高校で日本語教室を実施しているのですが、毎回出席率が低いです。
これは、日本語学習への目的意識が無いことが原因ではないかと考えています。

指導者から見ると、これからも日本で生活していくのであれば、
日常生活に困らないために日本語力が必要であることは明白なのですが、
生徒達はそのことをあまり理解していないように思います。

ただ、「日常生活に困らないために」という目的は、あまりにも漠然としています。
ですから、高校生の場合は、やはり卒業後の進路が具体的な目標になると思います。
そう考えると高校生への支援で一番必要なのは進路支援だと思います。
自分で考えて進路を決めることができたとき、やっと日本語学習の目的がはっきりと
見えるようになるのではないでしょうか。

そのときこそ、小さい頃から試行錯誤して身に付けてきた学習ストラテジー(手段)が
役に立つはずです。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【プレスクール欠席の理由】

プレスクールの初日、1月14日(土)は、大雨だった。
子ども用の名札、保護者のための「プレスクールハンドブック」、壁面飾り、
絵本読み聞かせ用の椅子・・・
大荷物を抱えて会場に向かった。

今年度のプレスクールは、1月14日(土)から3月4日(土)まで、全8回の開催だ。
9時30分から毎回2時間、「子どもの活動」と「保護者のための講座」がある。
昨年度はコロナウイルスの影響で、2回しか対面で開催できなかった。
今年は8回すべて開催できることを祈っている。

初日の参加は、登録者36名のうち21名だった。
大雨のせいかと思ったが、そうでもないらしい。
初日に欠席した親子は、2回目にも、3回目にも来なかったからだ。

プレスクールは、可美公園総合センター(南区増楽町)で行われる。
保護者の送り迎えが必須だ。9時30分の開始時間までに子どもを連れて来ることが
できるのは、土曜日が休日の親に限られる。
電話で欠席理由を尋ねると、土曜日も仕事が入ったと答えた保護者がいた。
方針を変え、ブラジル人学校へ入学させることにした親もいる。

早い人は8月に申し込んだのだから、方針が変わったとしても無理はない。
しかし、欠席した児童15名のうち、欠席理由が分かった児童はごくわずかだった。
市教委の通訳の方によると、大半の親に連絡がつかなかったのだそうだ。
15人分の資料とその作成の努力が無駄になるかと思うと、ちょっと悲しい。

プレスクールに参加できる子とできない子。保護者の講座に参加する人としない人。
小学校入学前の大きな節目の時期。
プレスクールに「参加する・しない」の選択は、一人ひとりの子どものその後の人生に
どのような影響を及ぼすだろうか。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは4年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
4月からは大学院で学ばれています。
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【旅】

副業が盛んだというニュースを見た。
副業を紹介するマッチングアプリもたくさんあるらしい。
「便利でいいですよね。」
アナウンサーが言っていた。私の意見はアナウンサーと違う。
正業で暮らせるだけの給料をもらえない社会はおかしい。
そのようなことを一緒に見ていた妻に話す。
「どの口がそんなことを。」
と苦笑いされる。
54歳にもなって大学院生などやっていると、正論をぶってもまともに取り合ってもらえない。

文化人類学のゼミに参加した。
学生の一人が休学して旅に出るらしい。
「恥ずかしくて、中々みんなに言えなかった」
と言っていた。このゼミの先生は仕事を辞めてJICAで海外に行ったり、
その後に大学院に入り直したりしている。先生がゼミのみんなに問う。
「旅に出たいと言うことに、恥ずかしさやためらいがある人。」
殆どの学生が手を挙げた。今の大学生は小学校のころから、将来の夢はとか、
その夢を叶えるためには何をしたらいいとか、キャリア教育をたたき込まれている。
人生において非効率的で、無駄なことをすることに罪悪感すら感じているようだ。
私もと手を挙げると、えっ田野さんも、と先生が驚く。
先生は私が若い頃にバックパッカーをしていたことを知っている。
「田野さんはプロの旅人なのに。」
隣に座っていた研究生のインドネシア人女性がかぶせてくる。
54歳で大学院生、妻はパートで働いている。息子は小学校4年生だ。
普通に考えたら旅に出たいなどと言えないだろう。
「自分を普通だと思っているの。」
妻ならそう言いそうだ。

《編者メモ》

苦手な寒い冬の日々を、どう楽しく過ごすか…。
冬晴の休日、低山登りにチャレンジしたりしていますが、
運動不足の私にとっては、苦行そのもの。
でも、頂上で、遠くに富士山が見えたりすると、達成感に満ちあふれます。
たまには、こんな休日もありですね。みなさんは、どうお過ごしですか?(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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