2022年9月号(225号)
夏休み期間だった8月は、皆さんにとっては、どんな8月だったでしょうか?
子どもたちのように、満喫できればいいのですが…
まだまだ暑い日が続いていますね。体調にどうぞお気をつけください。
にほんごNPOだより
- 高校生のための「オレンジドリル」
高校生のための日本語学習教材「オレンジ ドリル」ができました。
静岡県国際交流協会から依頼され、にほんごNPOのメンバー3名が知恵を絞って
作成しました。
協会のHPからダウンロードして使うことができます。
http://www.sir.or.jp/multiculture/japanese/orange/
高校生が知っておきたい情報や、進学、就職等を題材としたトピック形式のドリルで、
漢字力と語彙力の強化を目的としたドリルです。
尚、語彙や出題形式は日本語能力試験N3に対応しています。 - 子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
9月3日、17日(土) 15:00~17:00 - 日本語文法勉強会
◆9月 4 日(日)14:00~15:30
◆9月18日(日)14:00~15:30
10月も第一、第三日曜日に行う予定です。
参加費:にほんごNPO会員の方は無料です。
参加ご希望の方は、fwkf6203*gmail.com(加藤)にご連絡ください。
(お手数ですが、*を@に変えてください。) - ひらがな・カタカナ・漢字教室が始まりました
8月20日(土)13:00から、浜松市立白脇協働センターにて、初回の教室が開かれ、
5カ国10名の皆さんが、「あ行」から「さ行」の学習に取り組みました。
滞日2カ月の人から20年を超える人まで、レベル差の大きなクラスです。
9月24日(土)からは新たに3名の方が加わり、漢字の学習が始まります。
読書会
バトラー後藤裕子著『多言語社会の言語文化教育』(くろしお出版)を読み終わりました。
次の課題図書は、
小柳かおる著『第二言語習得について日本語教師が知っておくべきこと』(くろしお出版)
にする予定ですが、開始時期は未定です。
小春日和~現場から~….中村雅俊
◆リニューアル号より、特集として日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、
海外駐在を経験された方の声などをひろっています。
今回の担当は、4月から、ある中学校で学習支援をしてくださっている中村雅俊さんです。
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【難しい?「ある」と「いる」】
今年初めて支援するブラジル人中学生にあった日、担任の先生が、
「今日帰りのHRで1分間スピーチをすることになっています。
“紹介したい本”がテーマです。」と言った。
彼に聞くと、まだ何も考えてないという。あと数時間後のことなのに……。
話しながら一緒に考えて、彼は、学校の図書館にあるヘビの本に決めた。
さっそく、原稿を作り始めると、「山にヘビが・・・・」、「木が・・・・」
という文を書くことになった。その時、彼は、私たちなら無意識にしている「あります」
「います」の使い分けが出来ていなかった。
そこで、「教室に先生が・・・・、机が・・・・」などと、いくつかの例文を作った。
難しい?と聞くと、「うーん、ちょっと。」と答え、私の問いに一瞬考えながら、
口に出して練習した。
日本語は、人や動物には「いる」、モノや動かない植物などは「ある」を使うのだが、
母語のポルトガル語には、その区別がないのだろう。私自身、中学で英語を習った際、
There is(are)~ が、モノにも人にも使えることを不思議に感じたことを思い出した。
私は、趣味でスペイン語を学んでいる。日本語では、「子供を連れていく」
「プレゼントを持っていく」というように、人とモノによって動詞が変わる。
「プレゼントを連れていく」とは言えない。
ところが、スペイン語では、このどちらも同じ動詞が使える。
「人・モノ・こと」のどれにも使える動詞がスペイン語には多いように感じる。
自分の習得した第一言語と異なる文法ルールは、語学の学習において、「なぜ?」
「どうして?」の連続だ。けれど、一歩、一歩解決していかなくてはならない。
日本語学習者が楽しく言葉を学び、学習者の「なぜ?」に答えられるよう、普段から
日本語文法に敏感でありたいと思う。
にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【夏休みの過ごし方】
2学期が始まった。子どもたちは、どんな夏休みを過ごしただろうか。
中には、夏休みの間に日本語を忘れてしまった子もいるかもしれない。
年齢が低いほど、忘れるのが早い。低学年の子どもたちが心配だ。
小学校一年生の国語の教科書を開いてみよう。
1学期にはひらがなが、2学期になるとすぐ、カタカナが導入される。
そして、9月下旬、「上」の教科書の最後のあたりで、漢字が導入される。
「かずとかんじ」という単元だ。
この単元では、例えば、「十」は、「じゅう」という読み方の他に、
「とお」という読み方も覚え、「十ぴき」「十まい」のように
助数詞をつけたときの読み方も覚えなければならない。
日本語を母語とする子どもは、小学校に入学する前までに、
「きゃ、きゅ、きょ」のような拗音を除くひらがな71文字を
特に教えられなくても読むことができるようになっている。
語彙量も4500~5000語ほどあるという。
日本語に触れることなく育った外国人の子ども達は、
スタート時点で大きなハンディを背負っていることになる。
指導者から提出された1学期の報告書を読むと、2年生になっても
ひらがなの読み書きが身に付いていない子がいる。
夏休みは、遅れを取り戻すチャンスだった。
2学期の学習の様子を注視し、早めの手立てを考えなければならない。
思い出BOX…. 田野聖一
◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは4年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
4月からは大学院で学ばれています。
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【混んでいる電車】
中年女性が大勢いた。
数ヶ月前の日曜日だ。浜松駅から掛川駅まで在来線に乗る。
掛川市役所の日本語教室の仕事に行く。 日曜日の11時前、座れないくらい乗客がいることに驚く。
電車はめったに乗らないので、普段の日曜の様子がわからない。
愛野駅で殆どの中年女性が降りた。エコパスタジアムで何かあるらしい。
「羽生結弦ですよ。」
市役所に着くと同僚が教えてくれた。
17時頃の帰りの電車では、愛野駅からプーさんのぬいぐるみをぶら下げたおばさんやら、
羽生のTシャツをきた中年女性やらが大量に乗り込んできた。
ホームには乗り切れなかった人があふれていた。
先日も電車が混んでいた。
平日の10時台、若い女性がたくさんいる。結弦のときと同じ区間だ。
私は掛川日本語学校で仕事が入っていた。
「エコパで何かイベントがあるのかな。」
学校の事務所で聞く。ちょっと待ってくださいと事務員がパソコンで調べる。
「なにわ男子、ですね。」
昼と夜にコンサートがあるらしい。
「ああ、なにわ男子ね。」
ああ、と言ったはいいが、30代後半60代までの職員の中で、
メンバーの顔を知っている人は一人もいない。
「帰り座れるかな。」
出てくる感想もこの程度だ。
《編者メモ》
最近は、朝晩の暑さがだいぶ和らぎました。
私の寝室には、諸事情あり、クーラーがありません。
寝つきと寝起きが、少し楽になり、夏の終わりを感じます。(空)