にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2023年8月号(235号)

2023年8月号(235号)

コロナの制限がない夏休み。花火大会も久しぶりに開催されています。
旅行に出かけて思い出も増えていることでしょう。
熱中症に気をつけながら、楽しい夏にしたいですね!

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….深代千鶴
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

  1. 子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
    8月5日(土)15:00~17:00
    8月26日(土)15:00~17:00
    参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。
  2. ひらがな・カタカナ・漢字教室が始まります。
    日時:8月26日(土)13:00~14:30
       ※9月は①13:00~14:30 ②14:30~16:00   
       毎週1回 11月18日まで(11月11日を除く)
       10月から始まる漢字の授業から参加することもできます。
    場所:白脇協働センター(浜松市南区寺脇町241)
    申込:浜松市外国人学習支援センター TEL:053-592-1117

小春日和~現場から~….深城千鶴

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今回は、子どもたちへの日本語学習支援をしてくださっている深城ふかき千鶴さんです。
深城さんは、にほんごNPOだけではなく、複数の日本語教育の現場で様々な出自の皆さんに
日本語を指導していらっしゃいます。
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【第二言語習得について日本語教師が知っておくべきこと】

静岡文化芸術大学の日本語教育ゼミナールに参加させていただきました。
小柳かおる氏の『第二言語習得について日本語教師が知っておくべきこと』(くろしお出版)を
8回に分けて皆で読み進め、学び合うというものでした。

私は日本語が分からないために不利益を被っている外国人の若者を
助けたいという気持ちでこの世界に入りました。
ですが思うような支援の結果が得られず、日本語を効率よく習得するためには
どうすればいいのか悩んでいました。

文献には外国語の定着を阻む要因や教師が教室でできることなどが
詳しく書かれていました。
専門的な言葉が多く、何度も読み返す必要がありましたが、
ゼミでの話し合いも助けになり知識を深めることができたと思います。
時折文献を読みながら学習者の顔を思い浮かべては、うまくできない原因を
当てはめたりもしました。

興味深かったのは言語習得の過程とメカニズムです。
言語習得には音韻処理能力がかなり重要で認知にも影響するそうです。
その能力を第一言語で確立させないと第二言語の習得にまで影響が出ます。
さらに子どもの第一言語の口頭能力は第二言語習得の4技能にまでも
影響するというのです。それが年齢的にちょうど小学校ぐらいなのです。
つまり日本語ゼロの小学生にとって母語の習得具合が日本語の習得に
かなり影響するということです。
とても大事な時期なのだと思いました。

また教え方によって習得に差が出るということですから、教師は習得のメカニズムを
理解した上で授業をしなければならないと感じました。
しかし限られた時間の中でいかに良質なインプットを与え学習者の気づきを導くか・・・
難しいことだと思います。

今回のゼミの文献を読んで、
自分が知っていると思っていた「第二言語習得について教師が知っておくべきこと」を
私は本当の意味で知らなかったのだと実感しました。
第二言語習得研究は今後も続いていきますが、私たちはその情報に敏感であることが大切であり、
そうすることは自分のためでもあり学習者のためにもなるはずです。
そのことを忘れずに日本語教育に携わっていきたいと思いました。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【プレスクール~子どもたちの言葉を育む環境を】

夏休みに入り、気持ちに少しゆとりが生まれた。
教育委員会に行ったついでに、急に思い立ってBOOKOFFまで足を延ばすことにした。

注文してあった本を受け取り、絵本を4冊と文庫本を1冊買う。
長いこと立っていて疲れたので、近くの喫茶店に寄る。
小説は、久しぶりだ。いつも、仕事の役に立つ本しか読んでいないなあと思いながら小説を開く。
ことばが心に沁み透っていくのを感じる。

半分ほど小説を読んだところで、仕事を思い出した。
というわけで、このコラムの原稿を喫茶店で書いている。

教育委員会に行ったのは、プレスクール事業の契約に関するもろもろの手続きをするためだ。
契約書を交わして初めて事業準備をスタートすることができる。

今年度のプレスクール事業は、1月13日(土)から3月2日(土)まで。
まだまだ先の話だが、今からスタッフの研修だの教材作成だのをしていかないと間に合わない。
特に壁面飾りの作成には、これまで以上に気合いを入れて臨みたい。

プレスクールは可美公園総合センター(南区増楽町)の研修室を借りて行う。
保育施設や小学校と違い、壁面には何の飾りもない。
使うたびに飾り付けをし、終わったら原状復帰をするのは負担が大きいが、
楽しい雰囲気を醸し出すとともに、日本語の語彙習得に結びつくような壁面飾りを考えたい。
ひらがなも掲示に用いれば、ひらがなへの親しみも持てるだろう。

クラス担任の先生方に、LINEで試作品の写真を送った。
「動物だけじゃなくて、ハサミや鉛筆のキャラクターの掲示物も欲しいです」
「体と手足は、台紙に色紙を貼ってラミネート。腕と脚はモールで作るというのは?」
「紐を引っ張ったら手足が動くようにできますか?触りたくなるように仕向けたいです」
アイデアが飛び交う。

環境が子どもたちの行為を引き出す。
行為は波紋のように広がり、共感を呼んで交流となるだろう。
交流は、言葉を育むチャンスである。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは5年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
現在は、大学院で学ばれています。
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【唐揚げ】

息子が救急車で運ばれた。
木曜日の夕方だ。
「今学研の先生から連絡があって」
職場にいる妻から電話が入った。
「ひどくお腹を痛がっているから、迎えに来て欲しいって。」
息子は週に2回嫌々学研に通っている。
疲れただの、頭が痛いだの言い、休もうとすることがある。
この日も出かける前にお腹が痛いと言っていた。いつものことだと取り合わなかった。

迎えに行くと、脂汗を流した息子が先生といっしょにしゃがんで待っていた。
立っていることもできないようだ。急いで家に連れて帰り救急車を呼ぶ。
救急車に乗っても苦しそうだったが、しばらくすると、うとうとし始めた。

病院に着いた息子は処置室に運ばれていった。
待合室で待っていると担当の医者に呼ばれた。
「虫垂炎か感染性腸炎だと思います。」
虫垂炎なら血液検査で分かるらしい。息子の様子をみると大分落ち着いていた。
採血の済んだ息子が処置室から出てくる。
検査の結果虫垂炎ではないとのこと。
心配なら明日また病院にくるようにと医者に伝えられる。

帰宅時、車の中で息子が言った。
「救急車はよかった、ベッドがあって寝やすかった。」
帰宅後、息子は唐揚げを食べた。

《編者メモ》

通勤時、駅まで自転車に乗るのですが、さわやかな朝の空気が
日に日に暑くなり、ついに玄関を開けた瞬間に「暑い!」と口にするように
なってしまいました。皆さん、どうぞ体調には充分お気をつけくださいね。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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