にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2023年9月号(236号)

2023年9月号(236号)

夏休みも終わり、2学期が始まりました。
暑い日が続いているのは間違いないのですが、
朝と晩は、ほんの少しだけ、秋らしい空気になりはじめました。
マーケットも、美味しそうな果物が並び始めて、秋を感じますね。

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….小粥美由紀
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
9月  2日(土)15:00~17:00
9月16日(土)15:00~17:00
10月 7日(土)15:00~17:00
10月21日(土)15:00~17:00
参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。

小春日和~現場から~….

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今回は、小学校で日本語学習支援をしてくださっている小粥美由紀さんです。

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【絵本の世界へ】

私が絵本の世界に足を踏み入れたのは、息子が生まれてからのことです。
浜松市のブックスタートで頂いた『いないいないばあ』(松谷みよ子)の絵本は
ボロボロになるまで読みました。
そして息子と図書館へ行っては毎回12冊の絵本を借り、家に帰るとすぐに全部読まされました。

我が家には100冊以上の絵本があります。
共に絵本の世界を楽しんだ息子は中学生になり、ちょっと置き場に困る絵本たちは再び、
この日本語学習支援の活動で活躍の場を得ることが出来ました。
次はどの絵本を読もうか、と私は絵本選びを楽しんでいます。

さて、私と今絵本を楽しんでいるのは小学3年生と小学4年生の女の子たち。
3年生のMさんは、絵本の楽しさを少しずつ知り始めているところです。
初めは2冊の本から読みたい方を自分で選ぶ楽しみを知りました。
1学期の最後に読んだ本は『くまさん くまさん』(なかがわりえこ)
くまさんが朝の支度をして、勉強したり、お料理をしたりします。
「くまさんくまさん…」と楽しいリズムにのってお話が進むのですが、
Mさんは途中から「くまさんくまさん」と一緒に声にだし始めました。
成長を感じた瞬間でした。

以前、絵本の読み聞かせについての講座を受けた時に、
子どもを絵本嫌いにさせる3つの道具があると学びました。
読み聞かせをする時はその道具を使わないように心がけています。
1.文字を教える道具に使わない。
2.知識を与える道具に使わない。
3.しつけのための道具に使わない。
もうひとつ大切なのは、読み終えた後に感想を聞かないこと。
『ただ楽しむ』ということ。

4年生のIさんは、読み終えた後に「もう1回読みたい。」と言ってくれました。
それが面白かったという合図。私は心の中で「よし!」とガッツポーズをします。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【文字を学ぶということ】

「ベトナムに行って来たんです。これ、お土産です。」
と、ジャスミンティーをいただきました。
緑色の箱にジャスミンらしい白い花の絵が描いてあります。
パッケージに印刷されている文字は、すべてベトナム語のようです。全く読めません。

ベトナムで暮らすとなると、このような状態では、
食材一つ購入するにも不自由だろうなと思います。
日本に暮らす外国人の皆さんも、ひらがなや漢字が読めなくて、
大変な思いをしているにちがいありません。

8月26日(土)から、ひらがな・カタカナ・漢字教室が始まりました。
初日は、2カ国7人の皆さんが白脇協働センターに集まりました。
文字も会話も全くゼロからスタートする方もいらっしゃれば、ある程度読み書きができ、
会話にも問題がない方もいらっしゃり、レベルの差が大変大きいクラスです。

レベルの差だけではなく、当面の目標も違うようです。
日本で暮らし始めたばかりの方は、きっと、
「早く文字を覚えて、不便な生活を解消したい」と考えていらっしゃるでしょうし、
ある程度文字が分かる方は、「美しく整った文字を書けるようになりたい」
という気持ちをお持ちでしょう。
アンケートには、「日本でずっと暮らすから」とか、「仕事で使うから」と、
文字を学習する目的を書いていらっしゃいますが、
一人ひとりの思いは、アンケートからは、図ることができないような気がします。

11月18日まで、全12回で約3カ月という短い期間ですが、
学習者の皆さんの期待に沿うことができるよう、
スタッフ一同、最善を尽くしたいと思っています。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは5年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
現在は、大学院で学ばれています。
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【答え合わせ】

休み明けの初日、学生たちに尋ねた。
「夏休みはどうだった。」
「大変でした。」
留学生は週に28時間しか働けないが、
長期休み期間中は週に40時間働くことができる。
仕事が忙しくて大変だったという。
教科書を一度も開かなかったという学生もいた。

「教科書、鞄に入れっぱなしだったって。」
家に帰って妻に話すと、息子も同じだと返された。
しかし息子には夏休みの宿題がある。
夏休みのドリルは親が答え合わせをすることになっている。

ドリルの問題に、反対の意味の言葉を書けというものがあった。
以下(  )内が息子の答えだ。

海上に対して(天上)、送信に対して(向信)。
返信はメールを使っていなければ出てこないかもしれないが、
ボキャブラリーの少なさが露呈している。
(天上)に×をつけたら(海下)と直してきた。
天災の反対は(バカ)になっていた。

文を矢印の指示通りに書けという問題については、目も当てられない。
問題は
①「続ける」→丁寧な言い方
漢字の学習を(        )。
となっていて(     )の中を埋める。
息子は①の答えに( やめる )と書いていた。思考回路が不明だ。
丁寧の意味がわからなかったのかと疑う。

続いて
②「終わる」→打ち消す言い方
夏休みの宿題が( 消える )。

③「争う」→動作が済んだ言い方
国と国が( 爆破する )。

と書いてあった。

《編者メモ》

先日、富士吉田にある新倉山浅間神社に行ってきました。
「満開の桜の手前に五重塔、奥には富士山」の景色。
ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンの表紙になったことで、
海外の人に有名な場所です。
日本人の私は、最近まで知りませんでした…。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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