2023年10月号(237号)
先日の中秋の名月は満月でしたね!皆さんは、観ることができましたか?
お供は月見団子でしょうか?小さくて丸い里芋を食べる地域もあるとか…。
中国は月餅ですね。各々お国の伝統を聞きながら月夜を見上げるのもいいですね!
にほんごNPOだより
子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
10月 7日(土)15:00~17:00
10月21日(土)15:00~17:00
参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。
小春日和~現場から~….齋藤弓子
◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今回は、中学校や「ぐんぐん和田」で日本語学習支援をしてくださっている齋藤弓子さんです。
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【絵本の力】
中学生の日本語基礎指導をするようになって、約1年。
初めて担当したのは、来日半年くらいの中1男女、2名だった。
基礎指導30時間程度で、ひらがな、カタカナはOK。
漢字はアギラ(東京外大の漢字教材)の小2をほぼ終了。
そんな彼らに対し自分の無力さが申し訳なく、毎回「何か」で補おうと必死だった。
そんな中、息子の中学校でもやっていた、絵本の読み聞かせはどうかと思った。
私は朗読中心だったが、絵本を読んでいた人もいた。絵本の力を借りましょう。
選んだのは「ちがうねん」(ジョン・クラッセン作/長谷川義史訳・クレヨンハウス)。
訳は大阪弁なのだが、それが興味を引くかな、と思った。
小さいさかなが、大きいさかなの帽子をとって逃げる…、結末は考えて、というものだ。
中1男子は文字を読むのが上手だ。本を見つけると、立ったまま音読し始めた。
しかし、大阪弁は読みづらく、字に集中して絵を見ない。
感想は「持ったままめくるのが難しかった。」である。
中1女子には普通に読み聞かせをした。
彼に比べるとまだ日本語力は弱かったが、絵から内容を読み取り「食べた…。」と一言。
彼女の興味は引けた。
それで、彼女には後日
「ずーっと ずっと だいすきだよ」(ハンス・ウィルヘルム/久山太市訳・評論社)も読んだ。
でも、すぐに彼女の興味がなくなっていくのがわかった。
その子の日本語力や年齢(認知能力)を考慮に入れて本を選ぶことが重要だったのだ。
彼にも彼女にも、私は結果的に絵本の持つ力を生かすことができなかった。
現在、別の中学で中3生の支援をしている。
絵本や日本語多読教材の読み聞かせは、時間的余裕もなく、できていない。
だが、ペンギンが好きだという女子生徒には
「とうさんのあしのうえで」(いもとようこ・講談社)を貸し出した。
自分で読みながら絵本そのものをじっくり楽しんでくれればいいと思った。
結果的に新たな語彙も獲得できるだろう。
外国人中学生の場合、日本人の中学生以上に様々なストレスを抱えている。
絵本を読んでもらったり、絵本の世界に没入することで癒されることがあると、今は思う。
その子の今の日本語能力を考えて選んであげることは必要だが、
楽しむことで「絵本の力」は大きくなるのだ。
にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【スニーカーのつま先】
小中学校で日本語・学習支援をするには体力がいる。
昨年の9月から、東区のK小学校で週に一度支援をしている。
K小学校では、4階の教室まで喘ぎながら階段を上り、支援対象の子どもを迎えに行く。
教室の前で息を整えないと、先生とお話ができない。
これは困った。体力をつけなければ!
知り合いに、毎朝5時半に起きて1時間散歩をする、という人がいる。
「散歩は体にいいし、脳にもいい!」ということは、よく分かっている。
でも、毎朝5時半に起きるなんて、私にはとうてい無理だ。
私なりの方法で、何とかして体を鍛えたいと考えていた矢先、
浜北区の小学校に相次いで編入があった。
というわけで、今年の6月から、K小学校を含め、週に3校の支援をしている。
うち2回は電車を利用する。最寄りの駅まで徒歩10分。
電車を降りてから、浜北区のA小学校へは10分、㎅小学校へは7分歩く。
K小学校へは、往路はタクシー。帰路は、2.3キロの道のりを歩く。
9月は厳しい残暑に辟易したが、ランチのご褒美の頻度を増やして乗り切った。
きょう(原稿締め切り当日)は、K小学校に支援に出かけた。
北校舎3階の支援室から2階に下り、渡り廊下を通って南校舎4階の教室まで4往復。
「おっ、息切れしていない!」。少し体力がついたようだ。
しかし、喜んでばかりもいられない。
「スニーカーのつま先が削れている」のは、老化の証拠ではないか?
それとも、単に歩き方が悪いだけ?
電車に乗ると、乗客のスニーカーのつま先ばかりに目が行くようになった。
思い出BOX…. 田野聖一
◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは5年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
現在は、大学院で学ばれています。
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【鍋】
ネパール人学生がスマホの画面を差し出す。
「先生、これ日本語で何ですか。」
中級に入ったばかりのクラスだ。
作文で自分の国のファストフードを紹介する。
スマホの画面には黄色い豆の写真が出ていた。
「豆でしょ。」
「先生、これは豆じゃありません。」
どう見ても豆だ。
「豆はこれです。」
とネパール人学生に見せられた写真は、先ほどとは違う種類の豆が写っている。
「これも豆なら、あれも豆ですよ。」
「いいえ、先生、豆じゃありません。」
学生は執拗に譲らない。
ミャンマー人学生は、モヒンガーについて書いていた。
ミャンマーの麺料理だ。
「バナナの木の中に入っているものをモヒンガーに入れます。
先生、バナナの木の中のもの、日本語で何ですか。」
「えっ、バナナの木の中のものって、何。」
「ミャンマー語で〇×△です。」
ミャンマー語で言われても困る。
スリランカ人学生がスマホを持って近づいてくる。
「先生、この名前は何ですか。」
何だか先の方が細長くなった妙な形の調理器具が写っている。
「これ、鍋ですか。」
「そうです、鍋です。日本語の名前、何ですか。」
こんな鍋は日本にない。
《編者メモ》
暑さも和らいで、もともと旺盛な食欲に、拍車がかかっています。
シャインマスカットなど、フルーツも美味しいですね!
取り返しのつかない身体になる前に、「芸術の秋」も楽しみたいものです。
※今月号は、1日早く配信させていただきました。(空)