にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2023年5月号(232号)

2023年5月号(232号)

このニューズレター発行の頃は、GWも終盤。
浜松まつりも最終日ですね。今年は、人気俳優さんが来る、
ということで、何かと話題になっていますね。
コロナ以前のように、ラッパの音が響く日が待ち遠しいです。

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….齊藤明子
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
5月13日(土)15:00~17:00
5月27日(土)15:00~17:00
6月10日(土)15:00~17:00
6月24日(土)15:00~17:00
参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。

小春日和~現場から~….齊藤明子

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっています。
今回は、「ぐんぐん教室」で子どもたちの支援をしてくださっている齊藤明子さんです。
4月号の続きです。
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【熱い思いが人を動かす】

気づけばもう5月。新学期が始まって早1ヶ月。そろそろ新しい顔ぶれの「ぐんぐん学習会」が始まる頃だ。
先月号に続き、天竜協働センターでの「ぐんぐん学習会」を引っ張る「熱い思い」について語ろうと思う。

「ぐんぐん学習会」を引っ張っていってくれているのは齋藤純子さんだ。
前号で、齋藤純子さんの熱い思いが「ぐんぐん学習会」を生み出した、と語ったが、
ひと口に「学習会を主催する」といっても、やることは多岐にわたる。

毎月一日に行われる協働センターの場所取り(利用の予約)から始まり、
学習会の日程のお知らせの多言語でのチラシづくり、
指導者への来月の開催日程のお知らせメール、
子供の家庭への前日のメールや電話での連絡、
そして、予定参加人数の把握と指導者間のLINE連絡での指導者の確保。

当日は、ぐんぐん当日の部屋の鍵開けと鍵締め、参加費の徴収と保管。
指導者と子供の参加者の人数把握と記録、会場使用料の記録、
報告のための学習内容の簡単な記録など。

一部分は私も手伝ってはいるが、大部分は齋藤純子さんが一人で担ってくれている。
親御さんから、「明日はぐんぐんありますか?」と連絡があり、
ぐんぐんがない週にもボランティアで一緒に勉強した日々もあると聞いている。

これらの大変な作業も、「子供たちの成長が喜び」という指導者の想いがあればこそ、
苦労が苦労でなくなるのだ。

私もそうだが、実際、土曜日の夕方に都合をつけて出かけるのは、
月に二回とはいえど、続けるのは大変なことだ。
でも、小学生の時からみてきた子が、中学生になり、高校生になり、
高校を無事に卒業し、就職が決まったり大学進学が決まったりとの報告を受けると、
続けてきて良かったと思える。「ぐんぐん」に関わる指導者みんながきっと同じ想いのはずだ。

3月の最後の『ぐんぐん』の日、子供たち一人一人が日本語で自分の気持ちを語った。
その中で小6のGくんが語った言葉が胸を打った。
「もっといろんな場所で『ぐんぐん学習会』を開いて欲しい。」
彼の想いが、いつか実現しますように。

今年も5月13日から、天竜協働センターで月に2回の『ぐんぐん学習会』が開かれる予定だ。
どんな出会いが待っているのだろう。楽しみに待ちたいと思う。

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【あや取り】

小学校5年の国語の教科書に、「見立てる」という文章が載っている。
「わたしたちは、知らず知らずのうちに、「見立てる」という行為をしている。」という
文から始まる説明文だ。

例として、あや取りで作った形の写真が示されており、
それを何に見立てるかは、地域によって違っているのだという。

この単元の学習に入る前に、子どもたちの前で「あや取り」をやって見せたいと思った。
あや取りひもを手にかけ、基本の形を作ったはいいが、はたと止まってしまった。
教科書に載っている、ごくごく簡単な「あみ」の形が作れないのだ。
子どもの頃、母や弟と一緒にあや取りをして遊んだのに、手が動かない。

YouTubeを見て、練習することにしたが、動画を見て愕然とした。
この複雑な手順が「高齢者」となった私に記憶できるだろうか、
という大きな恐怖に襲われたのだ。

手順を忘れてしまったことに対する「無念さ」や、思い出せないことの「無力感」、
果たして自分にもできるだろうかという「不安」や「恐怖心」。
日本の学校で学ぶ外国人の子どもたちの心情に思いを馳せた。

気を取り直し、繰り返し動画を見て、一つ一つ手順を覚えていった。
「あみ」と、もう一つ、「東京タワー」の作り方をマスターした。
「頑張ればできるんだ」という達成感を味わった。

実は、教科書にはもう一つ、
アラスカで「かもめ」、カナダで「ログキャビン」と呼ばれるあや取りの写真がある。
これもマスターしたいところだが、5分を超えるYouTubeの動画を前に、
どうしたものかと逡巡している。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは5年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
現在は、大学院で学ばれています。
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【裸で歩く】

グライスは会話をスムーズに進めるために「会話の公理」として、
「質の公理」「量の公理」「関係の公理」「様態の公理」の4つが必要だと言っている。
「質の公理」は信じていないことや、嘘だと思うことを言うな、
「量の公理」は必要なことを必要な量だけ言え、
「関係の公理」は関係ないことを言うな、
「様態の公理」は簡潔に明瞭に言え、
ざっくり説明するとこんな感じだ。

小学校5年生の息子が家庭科の授業で自己紹介をした。
名前と好きな食べ物を言うよう指示されたらしい。
牛丼、ハンバーガーなどが続いた後、息子の番になった。
「味噌ラーメンが好きです」
この一言が流れを変える。
次の生徒は「塩ラーメンが好きです」、そして「僕は豚骨」「私は醤油です」と
ラーメン縛りが続いたという。
息子の発言は「量の公理」に反していたのだろう。
「ラーメンが好きです」と言えばこんなことにはならなかったはずだ。

日本語学校で「~た後で・・・」の授業をしたときだ。
「私は晩ご飯を食べた後で風呂に入るけど、みなさんはどう」
ミャンマー人の1人が答える。
「全部した後で入ります。」
何をしたのかが分からない。この学生の奥さんがこの4月に入学したことを思い出す。
「奥さんが来たからね」
一歩間違えばセクハラ発言だが、みんな笑ってくれた。

続いて「Vて・・・」「「Vないで・・・」を教える。
「妻は冬に靴下をはいて寝ます、私ははかないで寝ます」とやった後だ。
先ほどとは別のミャンマー人の学生が手を挙げる。
「私は服を着ないで寝ます」
シモの話が続く。
「えっ、パンツもはかないで、ですか。」
「パンツは、はいて寝ます。」

次にネパール人の学生が言った。
「服を着ないで歩きます」
「裸で歩くの、それはまずいよ」
「違います先生」
ネパール人の学生が訂正する。
「服を着ないで浴びます」
何の公理に反していたのか分からないが、「歩きます」ではなく「浴びます」だった。

《編者メモ》

浜松まつりは、ご存じのとおり、子どもが生まれたことを祝い、
健やかに成長することを祈る素敵なおまつりです。
祈りを込めて糸目付を済ませた初子ちゃんの大凧は、天高く舞っていますか?
子どもたちのラッパやおはやしの音色はいかがですか?(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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