にほんごNPO 外国人住民のための日本語教室、外国につながる子ども達の学習支援
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2024年2月号(240号)

2024年2月号(240号)

2月イメージ

2024年を迎えて、初めてのニューズレターです。
今年も、どうぞよろしくお願いします。
地震や飛行機事故など、大きな出来事で2024年が始まりました。
緊急時や非常事態を迎えたとき、日本語を勉強中の方は、
無事避難できたでしょうか?必要な支援を受けることができているでしょうか?
あらためて、「やさしいにほんご」の重要性を考えています。

  1. にほんごNPOだより
  2. 小春日和~現場から~….今月はお休みです
  3. にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子
  4. 思い出BOX…. 田野聖一
  5. 《編者メモ》

にほんごNPOだより

子どものための学習支援教室「ぐんぐん和田」(天竜協働センター)
2月10日(土)15:00~17:00
2月24日(土)15:00~17:00
参加ご希望の方は、090-6363-1006(さいとう)にお電話ください。

小春日和~現場から~…..

◆日本語教師のつぶやき、学習者のつぶやき、海外駐在を経験された方の
声などをひろっていますが、今月はお休みします。
会員の皆さんからの投稿をお待ちしています。ご連絡ください

にほんごNPO諸事雑感 …. 加藤庸子

◆にほんごNPOの代表として種々の活動に取り組む中で感じた諸々を綴ります。
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【私の人生を決めた本】

『文芸春秋』2023年5月号の特集は、「私の人生を決めた本」だった。
各界の81人の皆さんによるブックガイドだ。
本の片づけをしていて、再発見。もう一度じっくり読んでみたいと思って手に取った。

臨床心理士の東畑開人さんが、「人生に絶望的になっていた時期に、
そんな気分を吹き飛ばしてくれた」本として紹介しているのが、
高野秀行著『謎の独立国家ソマリランド』(2017年、集英社文庫)だ。

その高野さんが、幼少期に影響を受けた本として挙げているのが(p.296)
『ブンナよ、木からおりてこい』(水上勉)だ。(現在は新潮文庫で入手が可能だそうです)
水上勉さんが幼児向けの本を書いていることを知ってびっくりしたけれど、
高野さんが「私の文章力を最も鍛えたのがブンナだったかもしれない」
と記していることには、もっと驚いた。

高野さんは、物心がつく前から幼稚園に通っている頃までずっと、
お母さんに読み聞かせをしてもらっていたという。
さらに、この「ブンナ」は、繰り返し読んでもらったのだそうだ。

「このおかげで、私の脳内には言葉が文字ではなく音のリズムで刻まれたようだ」
という言葉は、このコラムの読者の皆さんと共有したい言葉だ。
そして、高野さん曰く、
「小学校にあがると自分で何度も読んだ。耳で聞いた音のリズムが、ここで視覚とつながった。」
このようにして、高野さんの読書生活が順調にスタートする。

高野さんの読書力・文章力の土台には、次の3つのことが挙げられるのではないだろうか。
1)母親に毎日読み聞かせをしてもらっていたこと。
2)好きな本に出合うことができたこと。
3)繰り返し、好きな本を読んでもらったこと。

読書は、間接的な経験だ。その経験を母親と一緒に楽しみながら、
高野さんは、言葉のリズムと豊かな語彙力を身につけた。
さらに、好きな本を繰り返し読んでもらったことで、物語の場面と言語表現が密接に結びついた。
そのおかげで、小学校入学後、自分でも容易に読書を楽しむことができるようになったのだ。

もっと言えば、その本が水上勉さんによって書かれた本であったことだ。
きっと、豊かな言葉で綴られていたにちがいない。(残念ながら、まだ、手元には届いていない。)

「お話読んで」とせがめば、何度でも読んでもらえる…。なんて幸せなんだろう。
親に愛されていることを肌で感じ、親と一緒に物語の世界にどっぷりと浸かるという経験を
どの子どもにもしてもらいたい。子ども時代には、なくてはならない経験のはずだ。
親による読み聞かせは、言葉の力を育てるだけではなく、人間の土台を作るのだから。

思い出BOX…. 田野聖一

◆国内外の日本語学校やNPOの日本語教室で日本語教師を長年務めてきた
田野聖一さんの「思い出BOX」をそっと覗いてみましょう。
田野さんは5年前に静岡文化芸術大学に入学して日本語学や英語教育を学び、
現在は、大学院で学ばれています。
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【3人】

「驚く」という漢字を読めない学生が何人かいた。

今年の3月に卒業する日本語学校の留学生だ。卒業文集を作っている。
プロフィールを書くページに「日本に来て驚いたこと」を書く欄がある。

「日本人はルールを守る」
「日本人は時間に厳しい」

毎年出てくるコメントだ。「お年寄りが働いている」なんかも割とある。
過去には「日本人は雨の日も仕事をしています」と書いてあるのを見て笑った。

卒業生の一人にスリランカ人がいる。
その学生の欄には、「日本人は面接の時間を絶対に守ります」とあった。

先日「清潔・整理・整頓」と書いた紙を手に、これはどういう意味ですかと質問をしにきた学生だ。
意味を教え、どうしてこれらの漢字の意味を知りたいのか尋ねた。
コンビニでアルバイトをしているという。
「今度アルバイトのリーダーになる試験があるんです」
面接の時間を守ることに驚いている人間に、リーダーを任せるのかと心配になる。
リーダーになっても時給は変わらないらしい。

ミャンマー人の驚いたことにも驚いた。
「アパートの部屋で音楽を聴いていたら、隣の人に警察を呼ばれた」

日本語学校で教えていると、驚くことが多い。
この日の最高気温は7度。
2人発熱で欠席し、学生数は19人。裸足の学生が3人いた。

《編者メモ》

ブラジル出身の受講生が、ある日欠席すると連絡がありました。
聞くと、家族が体調不良のため、医者にいくので、通訳のため休む、ということでした。
日本語学習の必要性を、あらためて感じました。(空)

ニューズレター「異文化交差点」
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